災害時におけるペットの避難場所の現状

とうふ先生(TOFU SENSEI)
10月9日
読了時間: 8分

猫などのペットを飼育されている方の災害時の避難場所の現状、課題、今後の対策について、検索結果を元にまとめます。

【災害時におけるペットの避難場所の現状】

＜同行避難の推進＞

環境省のガイドラインに基づき、多くの自治体で「同行避難」（ペットと一緒に避難所まで避難すること）が推奨されています。これは、ペットの安全確保や、残されたペットによる危害・迷惑の防止のためです。

＜ペットの一時飼育場所の設置＞

避難所内では、人とペットの居住空間を分けることが原則です。犬・猫・その他の動物ごとにエリアを分け、ケージやキャリーバッグでの飼育が基本となります。

＜事前の確認の必要性＞

避難所によってペットの受け入れ可否やルールが異なるため、事前に自治体への確認が必要です。

【課題・問題点】

＜避難所におけるスペースの確保と軋轢＞

人間の避難生活に加えてペットの一時飼育場所を設ける必要があり、スペースの確保が大きな課題です。また、動物アレルギーを持つ人や動物が苦手な人との間でトラブルや苦情が発生する可能性があります。

　　＜飼い主の意識と準備不足＞
- 同行避難をしない選択肢: ペットを他所に預ける、あるいは自宅付近で放つなどの対応を選択する飼い主がいるとの報告もあります。
  
  ＜しつけの不足＞
- 他の避難者や動物に迷惑をかけないための基本的なしつけ（不必要に吠えない/鳴かない、ケージに慣れるなど）ができていない場合、避難所での生活が困難になります。特に猫はパニックになり隠れてしまうことがあるため、日頃からのケージ慣れや洗濯ネットへの慣れが重要です。
  
  ＜物資の備蓄不足＞
- ペットフードや水、薬、トイレ用品など、最低5～7日分（できれば1か月分）の物資の備蓄が地域防災拠点にはないため、飼い主自身による準備が必須です。
　　＜猫特有の課題＞
　　パニックと逸走の危険性: 地震などの大きな衝撃でパニックになり、隠れて出てこ
　　なくなる、あるいは逃げ出してしまうリスクが高いです。
- ＜ストレスケア＞
  環境の変化に敏感な猫にとって、避難所での集団生活は大きなストレスとなります。家や飼い主の匂いがついたタオルをかける、段ボールで個室を作るなどの工夫が必要ですが、限界もあります。
　　＜迷子ペットの捜索・返還＞　　
　　災害後の混乱でペットと離ればなれになった
　　場合の再会支援の仕組み（所有権明
　　示の徹底、迷子情報共有のためのネット掲示板・アプリなど）が不十分な場合が
　　あります。

【今後の対策・実験していくこと】

平時の対策（啓発・訓練）

＜啓発活動の強化＞

飼い主に対し、災害時に備えて行うべきこと（しつけ、備蓄、健康管理、マイクロチップ装着、一時預け先の検討など）の啓発を継続する。

＜同行避難訓練の実施＞

避難訓練にペットの同行避難を組み込むなど、市町村の意識づけを定着させ、実践的な訓練を行う。

＜在宅避難の検討と支援＞

自宅の安全が確認できた場合の在宅避難の選択肢を広げ、車中泊や親戚・友人の家など、避難所以外の避難先を複数確保するよう促す。

＜備蓄品の工夫＞

大袋のペットフードを小分けにして避難所に届けるなど、現場のニーズに合わせた物資支援の仕組みを検討する。

【避難所での環境整備】

＜飼育ルールの確立と徹底＞

避難所ごとに**「飼い主の会」を組織するなどし、ペットの種類・大きさごとの区分け、他の避難者への配慮（鳴き声、散歩時間、排泄物処理）などのルールを明確化**し、運営に役立てる。

＜猫専用スペースの検討＞

犬とは性質が大きく異なるため、猫が落ち着けるような環境（目隠し、高さのある場所、静かな場所など）の整備や、避難所近くへの動物専用スペースの設置を検討・試行する。

＜支援体制の強化＞

獣医師会や動物愛護推進員などの専門家やボランティアと連携し、健康相談、ストレスケア、物資の提供などの支援体制を充実させる。

【テクノロジーの活用】

＜マイクロチップの普及＞ 迷子ペットの確実な特定のため、マイクロチップ装着の助成制度などを活用し、普及を推進する。

＜情報共有ツールの開発>

迷子・保護したペットの情報を誰でも閲覧・書き込めるネット掲示板やアプリなど、迅速な情報共有を可能にするツールの開発・実証実験を行う。

【災害時の主な避難場所の種類】

避難場所の種類	特徴	ペットの受け入れ原則	留意点（特に猫）
指定緊急避難場所/指定避難所	自治体が指定・開設する公的な避難施設（学校、公民館など）。	同行避難が原則。（飼い主と別スペースでの飼育）	アレルギーや衛生上の問題から、ペットは飼い主の居住空間とは別の場所（体育館の隅、屋外の係留所、別室など）で飼育されます。
自宅（在宅避難）	自宅の安全が確認できた場合に、自宅で避難生活を送る。	飼い主の管理下で可能。	建物や家具の耐震化が必要です。ペットのストレスは軽減されますが、ライフラインの途絶に備えた備蓄が必須です。
親戚・友人宅	事前に相談・調整している場合に預かってもらう。	預け先のルールによる。	知っている人や環境のため、ペットのストレスを軽減しやすいです。事前に了承を得ておくことが大切です。
動物病院・ペットホテル	災害時の一時預かりサービスを利用する。	事業者の対応・サービスによる。	予測できる災害（台風など）には有効ですが、大規模災害時は受け入れが困難になることがあります。費用や営業状況の確認が必要です。

「同行避難」と「同伴避難」の違い（重要）

環境省のガイドラインに基づき、以下の用語が区別されています。

用語	意味	避難所での生活
同行避難	ペットと共に安全な場所（指定避難所など）まで避難する行為。	避難所内では人とペットは別々のスペースで過ごすのが原則。
同伴避難	避難所でペットと飼い主が同じスペース（居住スペースや同室）で生活すること。	原則として認められていません（例外的な事例あり）。アレルギーや動物嫌いな人への配慮が理由です。

【ポイント】 日本のほとんどの指定避難所は「同行避難」（連れて行くことはOK、生活空間は別）であり、「同伴避難」（同じ部屋で生活）ではありません。

【ペット（猫）の受け入れ条件と注意点か】

公的な避難所でペットを受け入れる際の主な条件やルールは以下の通りです。

種類制限
- 犬、猫、小鳥、小型のげっ歯類（ウサギ、ハムスターなど）など、一般的なペットに限定されます。
- 特定動物（危険な動物）や家畜類は受け入れできません。
ケージ・キャリーでの管理
- 猫を含むペットは、必ず飼い主が用意したケージやキャリーバッグに入れて飼育・管理する必要があります。
- 日頃からケージに慣れさせておく**（クレートトレーニング）**ことが、ストレス軽減と避難所でのルール遵守のために不可欠です。
飼い主の責任:
- 給餌、トイレの始末、散歩（犬の場合）、健康管理、しつけなど、ペットの世話はすべて飼い主の責任です。避難所にはペット用の備蓄品（フード、トイレ砂など）はありません。
識別表示:
- 首輪、迷子札、マイクロチップなどで、飼い主を明示しておくことが求められます。
健康管理
- 犬は狂犬病予防注射済票の装着が必要です。ノミ・ダニの駆除など、日頃の健康管理も重要です。

【飼い主が行うべき事前の対策】

災害時にペットの命と安全を守るため、事前に以下の準備を徹底してください。

避難場所の確認
- お住まいの地域の自治体のホームページで、「ペット同行避難が可能な避難所」とそのルールを必ず確認してください。
- 避難所以外の預け先（親戚、友人、動物病院、ペットホテル）も、複数検討・確保しておきましょう。
備蓄品の準備（最低5日分、できれば7日分以上）
- フード、水、療法食、常備薬（1か月分程度）
- ケージ、キャリーバッグ、リード、首輪、洗濯ネット（猫）
- ペットシーツ、猫砂、排泄物処理用具（ビニール袋、ガムテープなど）
- 食器、タオル、おもちゃ、飼育手帳（写真、連絡先、かかりつけ医の情報など）
しつけと慣れ
- ケージやキャリーバッグに慣れさせる（猫にとって最も重要）。
- 知らない人や他の動物を怖がらないように慣れさせる。
- 決められた場所で排泄できるようにする。